調べるだけでは終わらない。本当に有効な情報調査の観点とは?
はじめに
こんにちは、2021年度新卒入社の神村です。
https://blog.gptech.jp/post-923/
この記事を作成している5月現在は新卒Off-JT研修の真っ只中で、先輩社員による講義やアドバイスを踏まえながら日々スキル向上に邁進しています。
GPTechは2019年より新卒社員を採用し始め、今年で3年目となりますが、Off-JT研修内容は毎年アップデートしています。今回紹介する情報調査研修も、主に新卒社員が実業務にあたる中で経験したことをもとにアップデートされています。
本日は、アップデートされたOff-JT研修の中の「情報調査研修」で学んだ情報収集をする上で必要な観点、考え方、分析方法についてご紹介したいと思います。
ご参考まで、2019年度の1期生の先輩が実施した情報調査研修の記事はこちらです。
研修の内容
今年の情報調査研修は、仮説思考・分析とシステムのパッケージ製品(以後、製品)についての講義から始まり、実際に製品の情報を調査して発表するという演習を行いました。
製品調査の演習では、実務内容に即した形で、複数の課題と要求を持つA社に対し、まず要件の整理とそれに見合う製品調査を行い、数多ある製品の中から4~6個の候補に絞ります。その次に詳細な調査を行い、最終的に一つの製品を選定し提案する、といった流れで進めます。
ここで重要な点は優先順位付けです。複数挙がった課題や要求の中から落としてはいけない条件は何なのかを考え、適切な製品を選定する必要があります。
私ははじめに”情報調査研修”と聞いて、出されたお題に対する情報をネットで検索し収集する方法の研修だと思っており、「調べれば出てくるだろう」と、想像したままの方法で演習を進めてしまいました。
しかし、その方法は間違っており、ただ調べるだけでは不十分な点が多く見つかってしまい、結果として正しい情報調査はできませんでした。
ここからは、情報調査のポイントと重要な思考法について、情報調査研修の詳細と私の反省を紹介していきたいと思います。
情報調査のポイント
情報調査の目的の設定
皆さんが調べ物をするシーンにはどのようなものがあるでしょうか。
例えば歯が痛いので治療のために歯医者さんを探したり、引っ越したいので良い物件と探したり、意外と日常的に行っていると思います。
何かについて調べものをするとき、そこには必ず目的があります。
なじみのない情報群に向かうときにも、目的と、目的に準じた決定するための根拠が存在します。
インターネット社会の現代は情報にあふれているため、つい目の前の情報を集めることに注力してしまった場合、本来の目的を見失いがちです。目的を見失ったまま情報収集を続けてしまうと、必要な情報を拾いきれず、後の意思決定の材料としても不十分な精度の結果が残ってしまいます。
本演習の目的は一つの製品を提案することです。そのためには、なぜこの製品を提案するのかという根拠を明確にする必要があります。
ではその根拠となる要素とはどのようなものでしょうか。
前提条件と評価観点
根拠の要素となりうるのが、前提条件と評価観点です。
前提条件とは、今回の演習テーマの場合は「システムを導入する際の最低限の条件」を指します。この条件が満たされない場合、他のあらゆる条件が優れたシステムであっても導入できないため、そもそも情報を集める意味がなくなってしまいます。
具体的な例を挙げると、賃貸物件を決める際にいくら物件そのものを気に入ったとしても、自身の収入では払いきれない家賃の物件は借りられませんし、毎日通勤する必要があるのに会社まで4時間かかるような場所にある物件も現実的ではありません。
本演習の場合、具体的に前提条件に成り得るものとしては、業務を行うために必要不可欠な機能、価格、A社の求めるシステム形態(クラウド/オンプレミス)等が挙げられます。
一方、評価観点とは何をもって最適とするかを評価するための項目(リスト)です。
賃貸物件を例にすると、バストイレ別、南向き、角部屋‥のように希望を列挙していきます。
本演習では、A社の抱える課題を解決し上げられた要望を満たすことのできる良いシステム(製品)とは何かということを、分解し項目化することで、評価観点として抽出しました。
優先順位付け
前提条件も評価観点も満たされていればいるほど良いものですが、すべてを満たすものが見つかることはあまりないと思います。
一長一短な製品に優劣をつける際に必要なことは「評価観点の優先順位付け」です。
先ほどの賃貸物件の例であれば、南向きか、角部屋か、どちらを優先するのかを決めていなければ判断に迷うのではないでしょうか。同様に、評価観点の優先順位が決まっていないと何も決められません。
では、どのようにして決めていけばよいのか。
必要なことは、評価観点として挙げた機能が、「発生している課題を解決できる機能」なのか、「“あればなお良い”という要望を満たす機能」なのかを区別することです。
区別できていれば、課題を解決できる機能と要望を満たす機能のどちらかしか持っていない製品が出てきた際に、課題を解決できる機能をもつ製品を選ぶという判断ができます。
あるいは、「要望を満たす機能」が所々欠けている製品を比較する場合、搭載している機能を見比べ、「○○機能のほうが優先順位が高いのでその製品を選ぶ」という判断ができます。
このように根拠を付けて優先順位を細かく定めることで、判断に迷った際も合理的に決めることができます。
「すべて満たすものが見つかるまで頑張って探そう」では、あまり効率的とは言えません。課題を解決できる機能と要望を満たす機能を洗い出し、優先順位を付けた上で情報収集に取り組むことが重要です。
仮説を立てた絞り込み
優先順位が決まったら、どのように調べたら求める情報にたどり着けるのか、仮説を立てます。
具体的には、何が得意な製品を当たればよいのか、また、必要な機能の一般的名称から、効率的に製品を絞り込める検索ワードはどの組み合わせなのかということを考えます。
この時、一度立てた自分の仮説に固執するのは危険です。
というのも仮説は経験則に基づくことも多いため、自分の経験が少ない内は立てられる仮説の幅も自ずと小さくなります。そのため、自分の仮説に縛られてより良い解決策を見落としてしまう可能性があります。
これらのことから、あらかじめ立てた仮説に沿って情報調査を進めた場合でも、軸となるような製品が見つからない、思っていた結論が見えてこない場合には、早い段階で仮説の見直しを行うことで、不要な情報調査を長時間続けることがなくなり、手戻りを最小限にすることができます。
しかし、これでは「経験が蓄積されるのを待つこと」が情報調査のコツとなってしまい、情報調査力向上が期待できる対応策としては十分とは言えません。
基本思考力で仮説を立てる
今回私が正しく情報調査をできなかったのは、機能の洗い出しが不十分であったことと、加えて”仮説力不足”が原因でした。
当然、経験不足という要因もあります。
しかし、経験則で仮説を立てた場合、明確な根拠がないまま調査を行うため、的外れな情報を調べてしまった際、その原因はブラックボックスのまま、ただ新たな調査パターンと結果が手に入るという結果に陥りがちです。
そこで、ここからは、経験則ではない仮説を立てる力につながる基本思考力について説明していきたいと思います。
基本思考力を鍛え経験によらずに仮説を立てることで、的外れな情報に行き着いたとしても、調査に至った根拠があるため、何が的外れだったのかといった原因を分析することができるため、根拠に基づいて結果を導く思考が身につきます。(積み重ねにより基礎思考力も向上します)ここで身についた経験を次の機会に流用することも可能です。
失敗は得難い財産ですが、そこには数だけでなく質も関係します。
例えるなら筋トレで、ただ闇雲に回数をこなすよりも、筋肉の部位やより効率的に負荷をかける方法を吟味した上でトレーニングメニューに取り入れた方が、何倍も効果的であることと似ています。
3つの基本思考力
ここで、基本思考力の代表的なスキルを3点ご紹介します。
仮説思考力
仮説を立てる力そのもののスキルです。情報の中で前提条件等の情報を整理した上で、限られた時間内に仮説を立てきることで鍛えることが可能です。
フレームワーク思考力
フレームワークとは思考の枠組み(情報を整理する箱)を指します。
全体を俯瞰する力と分解して考える力の両方が求められます。分解といっても、どの切り口で切るのか、足し算の分解だけでなく因数分解もできるかということが求められます。ボトルネック思考もフレームワーク思考力から派生するものです。
抽象化思考力
優先度が低い情報を省き要点だけをつかむことで、抽象度のレイヤーを上げる力です。計算等を概算レベルで早く算出する時にも用います。
これらの基本思考力を鍛えることによって、情報を収集する前に、収集すべき必要最低限の条件を効率的に整理することができるようになります。
基本思考力全般を鍛えるにはフェルミ推定のトレーニングが一般的な方法です。「もっと詳しく知りたい!」と思われた方はぜひ調べてみてください。
情報収集の後に行うこと
ここまでで、情報調査の前半工程にあたる「仮説思考」を説明しました。
どれだけ正しく仮説を立てるために思考し、情報収集のみを行っても、それだけでは目的を達成することはできません。目的を達成するためには、収集した情報を比較し、その比較結果から考察する必要があります。
今回例に挙げたシステム製品調査の場合、目的は最も確度の高い製品の提案です。そのため、先に決定している評価観点を基に製品を比較検討し、1つに絞るための根拠を得ることが「比較」にあたります。
情報収集:比較分析=50:50の法則
情報収集の前に仮説立てをし、立てた仮説に沿って情報収集し、その結果を基に比較をする(分析)‥という工程を踏むと、時間がどれだけあっても足りないのでは、と思ったかもしれません。
一般的に、情報収集は目的ではなく手段です。目的の達成において「仮説立て→情報収集→比較分析」といった工程があることを考慮すると、仮説立てと比較分析に時間を割くほど情報収集にかけられる時間は相対的に少なくなります。
そのうえで時間内に作業を終えるために、まず仮説立てに着手し手短に論点を整理します。次に、残りの作業時間を50:50に分け、情報収集と比較分析に振り分けます。
納得がいくまで仮説を立てようとすると思った以上に時間がかかりその後の工程に響いてしまうため、一旦仮説を決めた時間内に立ててしまい、その後情報収集する中で必要に応じて仮説の見直しをするなど、前工程に戻りつつ次の作業を進めることがポイントです。
作業内容的にも時間的にも当初から思い描いた通りに進めることは難しいものですが、思考力が鍛えられ思考の質が上がることで情報収集の時間も短縮され、何を分析すべきかということも明確になります。結果として情報調査全体の作業効率が上がり、より早く正しい情報調査ができるようになります。
空・雨・傘
思考力や分析、時間配分など、すぐ実践に移すのは難しい内容だと感じられた方は、情報に接するとき、「空・雨・傘」の考え方だけでもぜひ意識してみると良いと思います。(一般的に課題解決で用いられるフレームワークのため、ご存じの方も多いと思います)
空 は 空が曇っているという「事実」であり、
雨 は ひと雨きそうだという「解釈」であり
傘 は 傘を持っていこうという「行動」です。
つまり「空・雨・傘」とは、事実と解釈と行動の流れを意識し、根拠をもって事実から解釈を導き行動につなげる考え方です。
事象を分解して考察するときにも役に立ちますので、ぜひやってみてください!
まとめ
まとめですが、情報調査では、以下の過程を経ることが重要です。
① 目的の定義
② 前提条件や評価観点等の仮説立て
③ 情報収集
④ 比較分析
そして、特に②の仮説立てと④の分析に時間を割くことで、情報調査を効率的に行うことができ、失敗したとしても手戻りを最小限にできるということを学びました。
今後どのような情報調査でも(または物件探し等でも)、仮説立てと分析の時間を確保することに気を付けて効率的に調査を行いたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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