部下育成に悩む上司へおススメの「フィードバック」関連書籍
こんにちは、GPTechでコンサルタントを務めている寺門です。
前回は「チーム学習」という、広いテーマに関して書籍を紹介しました。今回はピンポイントに「フィードバック」に焦点を絞って、おすすめの2冊をご紹介します。
フィードバック、みなさんの会社では行っていますか?
そういった文化のないところから転職してきた身としては、事実に基づいて、相手の行動に対する評価や意見を伝え、軌道修正を促すフィードバックという行為はきわめて有益だと考えます。
顧客はじめ関係する人に自分の行動がどう映っているかを把握するのは、ベテランでさえもなかなか難しい部分もあります。的確にフィードバックできる能力はマネジメントにおいても必要不可欠でしょう。
さきほど、フィードバックには「軌道修正を促す」目的があると伝えました。
この記事を読んでいるあなたの上司や同僚、部下にとって、あなたのフィードバックは彼彼女の行動変容につながっていますか?
何度も同じ(ネガティブ)フィードバックを繰り返さざるを得ないとしたら、何が原因でしょうか?
指摘が的外れなのか、表面的だからなのか、相手が納得していないのか、あなたが変化を捉えられていないだけなのか、そもそも変化には時間がかかるものとして待つべきなのか・・・
この記事は、日々悩みながらマネージャー業をしている私含め「フィードバックの効果」について問題意識のある方に最適な内容となっています。
前回の「チーム学習」に関する記事(前編)はこちらです。
【推薦本①】フィードバック入門
『フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術』
中原 淳著/PHP研究所/209p/957円(税別)
1冊目に紹介するこちらの書籍は、比較的読みやすい本です。
「部下育成」が日本のマネージャーを疲労させている
著者は、最初に『日本のマネージャーが疲労している原因は「部下育成」にあり』として、現在の中間管理職は部下育成が求められているが結果が伴わないケースが多い、原因は職場環境の変化による構造的な問題であると指摘します。
背景には、1990年代以降の日本の職場の環境変化があるとして、「長期雇用」「年功序列」「タイトな職場関係(※密接な人間関係の意。筆者注)」という、かつての日本企業が持っていた3条件のもとでは“部下は勝手に育つ”可能性が高かったといいます。しかし、その条件はすでに崩れています。
そして、いまの中間管理職は、自分自身が効果的に育成された経験を持たないにもかかわらず、部下を育成せざるを得ない立場に置かれていることを指摘しています。
確かに、コンサル業界以外の畑からやってきた私自身を振り返ってみても、その通りだと感じています。
部下育成に必要な「フィードバック」の2要素
では、部下を育てるためにはどうしたらよいのでしょうか?
ここで重要なのが、相手の気づきを促す “コーチング” だけでもなく、他方、一方的に情報伝達をするだけの “ティーチング” でもなく、これらのバランスを取りながら行う「フィードバック」であると著者はいいます。フィードバックは以下2つの要素から成立するものだと定義されています。
1.【情報通知】
たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること(現状を把握し、向き合うことの支援)2.【立て直し】
部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと(振り返りと、アクションプランづくりの支援)
部下育成の基礎理論(経験軸とピープル軸)
また、部下育成の基礎理論として、「経験軸」と「ピープル軸」があるといいます。
「経験軸」とは、どんな育成プログラムよりも効果的なのは実際の業務経験であるという「経験学習」の考えに則り、「現在の能力でできる業務」のレベルよりも、すこし高めの業務を任せていくことの重要性が説かれています。
一方の「ピープル軸」ですが、「点」ではなく「面」による部下育成とあります。「人が業務の中で成長するのは、職場の人たちから、さまざまな関わりを得られたときである」という考え方です。
具体的には、「①業務支援」、「②内省支援」、「③精神支援」の3つが必要だといいます。
「①業務支援」は仕事の現場を中心に、相手に不足する知識やスキルを伝授することであり、
「②内省支援」は客観的な意見や俯瞰的な視点を提供して本人の気づきを促すこと、
「③精神支援」は励ましたり、褒めたりすることで、部下の自己効力感や自尊心を高めることであるといいます。
私自身もこの考えに異論はありませんが、①~③にどれだけの人数が関われるのか、周囲を巻き込めるのか、ということも重要だと考えています。
耳の痛いことを伝えるフィードバックの技術
次に、耳の痛いことを伝えて立て直すフィードバックの技術として以下の手順が示されています。
【事前】…情報収集(SBI情報※の収集)
【フィードバック】…
①信頼感の確保②事実通知:鏡のように情報を通知する
③問題行動の腹落とし:対話を通して現状と目標のキャップを意識させる
④振り返り支援:振り返りによる真因探求、未来の行動計画づくり
⑤期待通知:自己効力感を高めて、コミットさせる
(⑤の次は①に戻る、ループする)【事後】…フォローアップ
補足すると、SBI情報とは、どのような状況(Situation)で、部下のどのような振る舞い・行動(Behavior)が、どんなインパクト・影響をもたらしたのか(Impact)を略したものであり、 “何がダメだったか” を客観的に説明するための情報です。
私自身は全体としては理解しているものの、具体的に実践できているかといえば漏れている点や、毎回全てを認識できていたかというとムラがあったと反省しています。本人が行う振り返りが表面的であった場合は深掘りの支援を行う必要があるし、また、振り返ったことで何となく満足感を抱いてしまうことに対しては、期限を切ったコミットメントがあってしかるべきだと考えます。
なお、⑤期待通知に関しては、上司がしっかりと期待を伝え部下を「孤独」にしないこと、「再発予防」をすることが重要であるとも説明されています。
フィードバック実践における5つのチェックポイント
また、フィードバック実践の5つのチェックポイントとして、下記が挙げられています。
1.あなたは、相手としっかりと向き合っているか?
2.あなたは、ロジカルに事実を通知できているか?
3.あなたは、部下の反応を見ることができているか?
4.あなたは、部下の立て直しをサポートできているか?
5.あなたは、再発予防策をたてているか?
私も肝に銘じようと思います。
【推薦本②】リーダーのためのフィードバックスキル
『リーダーのための フィードバックスキル』 服部 周作著
すばる舎/320p/1760円(税別)
フィードバックは「成長」にフォーカスするもの
著者は、「フィードバック」とは「特定のプロセスや行動による結果に対して、向上を目的とした情報の伝達」だと定義し、「評価」ではなく「成長」にフォーカスしたものであると説いています。
成長にフォーカスしたフィードバックとは、人を導くためのものであり、ファクトに基づいた具体的な改善策を立て、他者ではなく自分との闘いに勝つためのものです。キーワードは「結果」と「向上」であると。
こういったフィードバックカルチャーが育つと、各自が自然にお互いの成長へ関与するようになるとしています。
フィードバックを実践するうえで根底にあるのは「人と人」のつながりであり、優先度の高い指摘に絞って、相手が納得できるように、相手の価値観に合わせて伝えることが重要だといいます。
特に難しいのは「相手の価値観に合わせて」ではないかと私は思います。経験もスキルも異なる相手に対して、自分の立場から指摘を行ったところで、確かに相手に届くかは怪しいものです。私自身の反省も込めて言えば、フィードバックとは「想像力」と「訓練」が必要なスキルなのです。
フィードバックの良し悪しを判断する3つの観点
本書で紹介されている良いフィードバックか判断するための3つの観点というのも、チェック項目になります。(3点目はいかんともしがたい部分もありますが。)
1.Is it SMART?
具体的で、測定可能で、達成可能で、関連性が高く、タイムリーであるか。
2.Does it Stretch?
ほどよい目標であるか。
3.When does it expire?
手遅れではないか。フィードバックを受ける側の柔軟性があるか。
実践のための「フィードバックループ」
そして、次が本書の見どころ、実践のための「フィードバックループ」として以下4つのステップが紹介されています。
①観察をし、ファクトを集める(頻度・スパン・量をどこかに記録しておく)
②相手の言い分を親身になって聴く(アクティブリスニング)
③その行動について自分の感情や気持ちを伝える(インパクトを与える)
④自分だったらこうすると案を出し、正しい行為を伝える(正しい解が難しい場合は質問形式で「一緒に」作っていく)
注意点として、「フィードバックの『内容』とそれを指摘する『人』を切り離して考えるのは困難」であり、だからこそ、主観を取り除き、ファクトベースで「誰が言っても同じに聞こえる」ようにしよう、と著者は言っています。
私が意外に感じたのは「③その行動について自分の感情や気持ちを伝える(インパクトを与える)」の部分です。
事実に対して「気持ち」を入れ込むというのは、ここまでの説明と矛盾するようにも見えますが、感情を持ち込む(その時抱いた感情を説明する)のは説得材料として非常に効果的だといいます。
上司であろうが「相手も自分と同じ人間」だというのは率直に伝わるものであり、細かく感情を伝えることで理解や整理がおこないやすくなるものです。人は「考え、感じ、実行する」ことを忘れてはいけません。
相手に感情が伝わったあとは、後に引きずらないで、アクションへシフトします。
まずは、A)すぐに改善できるものから言う。次に、B)期待値を言って握る、C)できたら即、褒めて、強化する、D)できないときは原因を探る と続きます。
チームラーニングとしてのフィードバック
また、チームラーニングとして、チーム全員が全員に対して行えばフィードバックの量も質も高まります。これはメンバー同士でも互いにフィードバックを行うので、カジュアルに、誰もが本音を口にしやすいという特徴もあります。
私がプロジェクトで実践する「振り返り会」もチームラーニングに該当します。もちろん効果はあるし、継続して行うべきだと考えています。
注意点としては、タイミングよく適度な目標となるタスクをメンバーに与えられるか、一度切りにならずに反復できる状況を作れるか、といったところが意外と難しく、工夫が求められます。
そして、根本的にメンバーのモチベーションに大きく作用されるものである、という点も重要です。失敗から学ぶ姿勢は人によって異なるし、周囲の取り組みから刺激を受けるものでもあります。
本書にある『仕事とは「自己の能力」「環境」「働く仲間」に左右されます。実は問題の難しさやトピックの複雑さは二の次なのです。お互いに補強し合える環境を整えることで、メンバー同士の理解が深まり、信頼関係が生まれます。』というのは共感できます。
おわりに
フィードバックは、「評価」ではなく「成長」のために行うものです。
「成長」が一朝一夕に達成されるわけでもない以上、ある程度時間はかかるものとして根気強く続けていく必要はあるのでしょう。ただし、より良い方法で。
私の場合は、部下に対する期待値を明確にして、はっきり伝えるという点で、改善ポイントが見えてきました。今後の実践にも活かしていきたいと思います。
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