チーム学習の実践において役に立った書籍3選(前編)

チーム学習の実践において役に立った書籍3選(前編)

初めまして、2020年2月に中途入社した寺門と申します。長らくWEBエンジニアだった私がITシステムを作る側から発注する側の支援に尽力したいと考え、GPTechに参画してから1年が経過しました。

プロジェクトの現場で若手メンバーとともに活動しながらチームのマネジメントに関して色々と悩んでいるところですが、業務の傍ら様々な本から知識を得ることも多く、今回、前編、後編という形で記事にまとめました。同じようにチームワークの在り方やマネジメントに悩んでいる方の参考になれば幸いです。

チームの実行力をどう底上げするか

組織と戦略を考えるときに、「組織は戦略に従う」あるいは「戦略は組織に従う」という考え方があります。本記事はそれを述べる場所ではありませんが、「組織の実行力が戦略の自由度を決める」(『プロフェッショナルコンサルティング』 波頭亮、冨山和彦著 東洋経済新報社)ことは、組織力強化に力を入れる会社において重要な観点だと思います(弊社もその一つです)。

私がプロジェクトの現場で率いるのは数名のチームです。わずか数名ですが組織の縮図にはなり得ます。我がチームの“実行力”はどのように強化できるのか、どうすればメンバーが個人として力を伸ばし、チームとして有機的に機能する体制を作れるのか、参考情報をもとめて本を読み進めていきました。

実践で目の当たりにしたチームマネジメントの課題

はじめに白状すると、私がリーダーとして関与するあるプロジェクトにおいて、業務遂行においては成功したものの、組織学習としては大きな課題が残ってしまったものがありました。

どういうことかというと、「重要な工程において最もスキルのあるメンバーが業務を一手に引き受け推進した結果、プロジェクトの山場は何とか乗り切れたものの、他のメンバーが新しい経験を積む機会が限られてしまった」というものです。この課題の悩ましい点は、再び同じ状況に陥ると、同じ結果になる可能性が高い・・・というものです。

プロジェクトにおいて我々には、目的を達成するために、品質、コスト、納期を守りながら顧客の期待に応えていく、あるいは期待値以上の成果を上げることが求められます。それと同時に、経験・スキルの異なるメンバーが役割分担を行いながらも、それぞれが新しい経験を積んで成長していくことも必要です。

上記のケースでは後者の目的が達せられていないために、同じ機会があったとしても同様の結果になってしまいます。私の中では同じ轍は踏むまいという危機感は残り、「チームの成長」に関する自分なりの研究を本腰を入れて開始したというわけです。

リーダーが持つ影響の大きさ

私の関心は、メンバーの成長、経験学習、メンバーとリーダーの関係性、リーダーシップ、チームとしての成果、学習する組織・・・といったものにありました。一部は実践し試行錯誤を繰り返したことで、チームのパフォーマンスは想像以上にリーダーの考え方・行動によって左右されるものだという確信を持ちました。(もちろん成果が表れるのには時間も必要です)

人の成長の7割が現場経験によって培われる(70:20:10の法則)と言われます。通常、メンバーが担うタスクの種類や難易度、対応方法はリーダーの采配や方針によって決まる部分も多いものです。そうであるならば、メンバーの成長は、どんなリーダーと共に働くかに少なからず左右されるのではないか。それはまた、リーダーの振る舞いも含めてチームが成長するということではないかと考えるようになりました。

私自身いまも思い悩むところは多々ありますが、同じような境遇の“悩めるリーダー”たちに向けて、今回は3冊の本をご紹介したいと思います。一連の読書において、当初は個別テーマに焦点を当てた、具体的で読みやすい本が中心だったのですが、徐々に、やや抽象的だが対象範囲が広くページ数も多めの、いわゆるロングセラーの本に移行しました。

後編で紹介する『学習する組織』などが特にそうですが、多少難解な部分もあるものの、個別テーマに特化した本数冊で言及されていることが、1冊でかなりカバーされている印象があります。そのため、今回は本の数を絞って1冊あたりの紹介を多くしたいと考えました。

ご紹介する内容は、私の主観で参考になると感じた箇所を抜粋したものです。気になった方はぜひご自身でも読破されることをお勧めします。

【推薦本①】モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』
ダニエル・ピンク著、大前研一訳
講談社/306p/1,982円(税別) (文庫版 902円)

この本を読む前から私には、人のやる気を他人が駆り立てるなんてことが出来るのだろうかという素朴な疑問がありました。

私だったら、(自分自身がその必要性を実感していないのに)誰かに言われただけで本気でやろうという気持ちには、まずなりません。個人の心の領域に他人が入り込むことは相当に難しいことですし、すべきでないとも考えます。

しかし一方で、チームが活発で意欲の高いメンバーが揃っていた方が気持ちも良いし、パフォーマンスも高い。リーダーがメンバーにモチベーションを高めてほしいと期待するのも自然なことではないかと思います。

本書はそんなモヤモヤした思いにひとつの考える基準を与えてくれる本です。著者のダニエル・ピンク氏はエール大学ロースクールで法学博士号取得し、クリントン政権下でゴア副大統領の首席スピーチライターなどを務めた人物で知られています。

著者によると、モチベーションには以下の3つのメジャーバージョンがあるといいます。

  • 人間を行動に駆り立てる要因として食欲や生存本能に基づく<モチベーション1.0>
  • 工業化社会におけるアメとムチで駆り立てる<モチベーション2.0>
  • 「自律性」「マスタリー(熟達)」「目的」によって構成される<モチベーション3.0>

筆者は本物のモチベーションとは<モチベーション3.0>だと言います。人は他人のモチベーションを上げることはできない。そうではなくて、人間にはじめから備わっている学習への欲求を阻害しないようにすることが重要であると説きます(金銭的な報酬でさえ、目的のすり替えという点で―つの阻害要因になります)。

例えば、Wikipediaやオープンソースの世界がその一例です。作り手にはそれぞれの動機や目的があるのでしょうけれど、彼らは基本的に「やりたいからやっている」わけです。

本書で紹介されている「自己決定理論」(エドワード・デシ、リチャード・ライアン 1975年)によれば、人には生来、①能力を発揮したいという「有能感」、②自分でやりたいという「自律性」、③人々と関わりたいという「関係性」といった三つの心理的要求が備わっているといいます。

この理論は現在進化し、外発的・内発的動機付けという分類方法は「管理・統制された行動」と「自律的な行動」に分類されるようになりました。したがって職場において、リーダーの役割とは「自律性を持てるようにメンバーを支援する」ことになります。

しかし一方で、著者はすべての状況において<モチベーション3.0>で臨めと言っているわけではありません。ケースバイケースで使い分けられるべきであり、「短期的には」<モチベーション2.0>が有効な状況があることも認めています。(例えば、決まった期限に一定の品質で成果物を仕上げなければならない場合など)

では、リーダーはメンバーに対して「自律的な行動」を、どこまで任せればよいのでしょうか。

本書では、それに対する正面からの回答はありませんが、ヒントを以下にまとめました。

・自立は独立とは異なる。無頼の個人主義ではない。自立とは、選択をして行動すること(他者からの制約を受けずに行動できること)であり、他者と円満に相互依存できることである。

・<モチベーション3.0>において、人は本来の責任を果たすことを”望んでいる”。課題や時間、方法、チームを確実に任せることが、目的にいたる早道であると考える。

人生で最高の、もっとも満足できる経験とは「フローの状態」だ。フローの状態では、目標がはっきりしている。そのフィードバックはすぐに返ってくる。例えば演奏中の音楽家や試合中のスポーツ選手、絵を描いている最中の画家たちが何を考えているか?時間はあっという間に過ぎ去り、自意識も消え去った状態。活動そのものが自己目的的になっている状態である。

・もっとも重要なのは、フローにおいては、やらなくてはならないことと、できることの相関性がぴったりと一致する点だ。課題は簡単すぎず、難しすぎない。しかし現在の能力よりも、1,2段高く、努力という行為そのものがなければ、とても到達できないレベルのことを無意識でやっている。このバランスが、その他の月並みな体験とはまったく異なるレベルの集中と満足感を生み出す。平たく言うと「仕事に没頭している」。

また、チームマネジメントを考えるうえで参考になりそうな「会社、職場、グループ能力を向上させる9つの方法」が紹介されていたため、その中から抜粋して3点を紹介します。

・リーダーがコントロールを手放すための3つのステップ
① 目標設定を一緒に行う
②支配的な言葉を用いない(~しなさい、ではなく、検討してほしいという)
③(部下のための)時間を確保する

・「目的は何か」と問いかける
チームメンバーに紙を渡して、「この会社(組織)の目的は何か?」を書いてもらう。

・ライシュの代名詞テスト
部外者に組織の話をするときに主語は「彼ら」ではなく「我々」となっているか?

本書はチームの成長を考えるうえで、自己決定の大切さを再認識させてくれた一冊でした。

自分は、メンバーが自律的に動くのを邪魔していないか?マイクロマネジメントになっていないか?口出ししたくなるのをこらえて待ってみる。その後にタイミングを見計らってフィードバックする。例えば1on1や”振り返り会”の場も活用することで、リーダーはメンバーが自己決定し、必要に応じて軌道修正していくサポートが出来るのではないかと考えます。

後編に続きます。(5月上旬公開予定)

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