GPTech代表/創業者の坂本への1万字インタビュー

GPTech代表/創業者の坂本への1万字インタビュー

こんにちは。GPTechの新卒採用担当です。

GPTechの創業者である代表取締役社長の坂本に、
・創業のきっかけ
・IT業界に対して考えていること
・今後のGPTechの展開
・新卒でGPTechに入社したら得られる経験 等
についてインタビューを実施しました。

GPTechにご興味をお持ちいただいた新卒の学生さまに限らず、転職活動をされている方にもお読みいただきたい内容になっています。

1万字を超える長いインタビュー記事になっていますが、ぜひお読みください!

※本記事の内容は、2023年5月時点の内容です。


IT業界に対する思いとGPTechを創業した理由

GPTechを創業するまでの経緯、創業した理由

はじめに、坂本さんのこれまでの経歴やGPTechを創業するきっかけになったことを教えていただけますか?

(坂本)
まず経歴としては、最初は大手のSIerの営業部門に所属し、システムの提案やコンサルティング案件の受託業務を担当していました。
大規模プロジェクトの提案や受託業務の履行は非常にやりがいがありましたが、4年ほどの経験を経て、もっと短いスパンでの試行錯誤を通じて経験を積みたいという理由で、ベンチャー系の小規模なITコンサルティング企業に転職しました。ITコンサルティング会社で様々なITコンサルティング業務に携わりながら、取締役にもなる機会を得ました。

その中でたまたま「発注者支援」というプロジェクトに関わる機会があり、非常に大きな感銘がありました。
これまでのITコンサルティングにおいて漠然とした違和感があったのですが、発注者支援の業務を通じて「これは非常に価値の高い仕事である」「自身がこれまで行ってきた仕事の価値があまりなかったのではないか」と気づくきっかけとなりました。

そこで、営業活動において発注者支援の仕事を増やしつつ、自身の力量を高め、その価値の高さに確信を持った上で、IT発注者支援に特化した企業を創りたいと考えるようになりました。これが創業するきっかけです。

― 初めて発注者支援という仕事を受けたときに、これまでの仕事のやり方における違和感に気が付いたということですが、それは大手のSIerで営業として働いていらっしゃったときも、ベンチャー系のITコンサルティング企業でITコンサルタントとして働いていらっしゃったときも、どちらでも感じていらっしゃったのでしょうか?

(坂本)
振り返ってみれば、両方とも違和感があったと言えますね。

説明が難しい部分もありますが、例えばSIerでの営業の経験では、顧客に情報システム投資の費用対効果を説明して説得することが重要でした。

いかに顧客を説得するか、いかにシステム投資をしてもらうかという観点での提案になっており、結局は自分たちの受注があがるかというシナリオでしか提案できていなかったと思います。

もっと言えば、この内容を伝えると若干都合が悪いというのはあえて言わなかったり。発注者とシステム会社の情報格差を利用して顧客に伝える情報を選別し、意思決定しやすい情報だけを伝える方法などもあったと振り返っています。

ITコンサルティング企業に移ったときは、ユーザー企業だけでなくシステム会社からの仕事の依頼にも多々対応することがありましたが、エンドユーザーからお金をいただいているにも関わらず、システム会社の都合に合わせた提案を手伝いながら、実はシステム会社のための提案になっていたという状況がありました。知らないうちにそのような仕事ぶりになっていました。

また、発注者側の立場でシステム会社管理や価格交渉代行などを行う仕事もありましたが、いかに見積もりを下げるかを目的とする仕事では、システム会社が疲弊しシステム会社からにらまれ、システム会社が決して喜んでいない状況でした。結局は、システム会社が良い仕事をしてくれない、追加費用が発生するなど、最終的に発注者にもたらす価値は大きくなかったと感じます。

現在は、発注者支援という立場で発注者の体制を強化することが重要であり、システム会社をいびるのではなく、システム会社が働きやすい環境を作り、仕事をきちんとしてもらえるような状況を整えることが重要だと感じています。

発注者の満足度だけでなく、システム会社の満足度も引き上げるような関わりを心掛けて発注者支援をしていくと、良いプロジェクトになるという実感がありました。

IT業界に対する課題意識

― IT業界全体を見渡した場合、坂本さんがこれまで働かれていた企業以外でも、やはり発注者のためにはならないような提案になってしまうコンサルティング会社やシステム会社は、一般的に多いのでしょうか?

(坂本)
発注者支援での仕事を初めて経験したあとは、目の前のクライアントを改善することだけではなく、IT業界全体の構造的な問題に注目して仕事をするようになりました。

私が関わった会社やプロジェクトだけでなく、世の中にはこのような課題が溢れていることを確信しました。それが業界全体の問題であると認識し、その構造的な問題を変える会社として創業しようと思いました。

創業後も、このテーマに基づいて会社を運営してきました。業界の構造的な問題がいかに根深いものであり、長い歴史の中でその問題が積み重なってきたのかをまざまざと実感しています。その重い課題に取り組む会社として、創業してしまったんだなと感じているところです。

IT業界とGPTechのこれまでと今後

創業から現在までの事業運営、IT業界の変化

― 重たいミッションを掲げた会社という話もありましたが、実際に創業されてから12年ほど経ちます。発注者の支援をすることをポリシーとして掲げて事業をされてきて、IT業界へのインパクト、目の前のクライアントへ提供できている価値など、事業を展開してきての感触はいかがでしょうか?

(坂本)
創業時には、主に「発注支援」という言葉を使用して、ITの取引をよくする事業としてスタートしました。良いシステムができる、良い投資ができるという実績は順調に積み重ねてきました。

しかし、ITの調達支援を行っても必ずしも発注者のIT体制が強化されるわけではないということに気が付きました。結果的に、次の段階のIT投資は我々が支援しなければうまくいかないことや、投資済みのシステムの維持においても課題が生じることも実感しました。

最初の7~8年で事業を運営するなかで、IT調達を手伝うだけではダメだと感じました。我々が実現しなければいけないのは、「IT体制の強化」であって、ITの調達支援という手段は短期的な効果を追求する施策に過ぎない、という認識を持ちました。

我々が提供したい価値は発注者の「IT体制の強化」にあり、IT調達の支援だけではないとして、フォーカスポイントを変えました。また、IT調達支援においては、発注者であるユーザー企業の社員とハンズオンでプロジェクトを進め、そのプロジェクトを通じてユーザー企業の社員がどれだけ成長しているかも評価指標の1つとして設定し、IT調達の中でIT体制組織の強化が図られるように努めています。

IT体制の強化においても、やっと少しずつ貢献できるようになってきたというのが今の実感です。

※現在GPTechでは、「IT戦略支援」「ITガバナンス構築・運営支援」「IT調達支援」の3サービスを軸に、クライアントのIT体制の強化を支援しています。
詳しくはこちら

― 「ITの調達支援を行っても必ずしも発注者のIT体制が強化されるわけではない」という点について、発注者がGPTechに丸投げをしてしまい、発注者側が主体性を持ってIT調達をできないっていうようなイメージでしょうか?

(坂本)
そうですね、GPTechというよりもコンサルティング会社という言い方の方が適切かと思います。残念ながらコンサルティング会社に丸投げしている構図は目につきます。

GPTechを創業して12年経ち、業界全体として、発注者の体制が重要であるという世の中の認識が広まってきたと感じています。我々の会社がどれだけその認識に貢献できたかは評価できませんが、発注者がしっかりとした体制を組むことの必要性の認識が広まってきたと言えます。

その結果、我々を含めて発注者支援のコンサルティングを提供する企業やそのサービスを受ける企業が増えてきました。しかし、多くのコンサルティング企業が、支援が必要ならば全面的にお任せくださいと言って、丸投げを助長することで売上を拡大しています。こうしたコンサルティング会社が台頭しているのが、この12年の中で新しく起こってきたIT業界の課題です。

従来はシステム会社に丸投げでしたが、コンサルティング会社に丸投げするというように課題がシフトされただけであり、根本的な課題解決には至っていないという認識です。

我々はクライアントが主体であるべきだという理念を持っていますが、その思いをサービスメニューのあり方としてもより強化していかなければなりません。

― IT調達の支援だけではなく、IT体制の強化も最近は取り組みつつあるっていうことでしたが、IT体制の強化というのは、具体的にどのようなアプローチをされているのでしょうか?

(坂本)
大きくは3種類の関わり方があると考えています。

まず、1つ目は、クライアントの社員に経験値に関係なく積極的にプロジェクトに参加してもらい、彼らに役割を持ってもらい、その役割の果たし方を支援するという形で、クライアント社員の力量をOJT的に育成することです。これは既存社員の育成にあたります。

次に、プロジェクトの期間は短くても1年、長ければ3年ぐらいは関わるため、その期間に経験者を採用できるように、どのような人材を採用すればよいかの助言や、採用した人間が企業内でスムーズに活躍できるような環境を整えることも重要です。
IT体制が整っていない会社では、たとえ経験のある人材が入社したとしても、その人材をどのように活用すればよいか分からず浮いてしまう、ということが起こります。経験者であっても相談相手は必要なので、GPTechが社員同等の立場で参画していると、GPTechに相談をしてスムーズに活躍ができます。

また、3つ目として組織整備という側面で、情報システム組織の業務分掌やIT調達のルールやプロセスの整備を行うことも重要です。これによって再現性の高い調達方法を組織に浸透させることができます。
もちろん、ルールを作ればそのルールに従って実行できる人材が必要となるので、先ほどのクライアント社員の育成や中途採用の支援と合わせて、組織の体制強化を進めています。

― 実際にGPTechがIT体制の強化という形でクライアントに関わるようになり、クライアントからどのような声をいただいていますか?

(坂本)
まず、1つ目にあげた方法でのクライアント社員の育成に関しては、昔から割とできていました。

話がそれますが、当社のポリシーとして、他の大手コンサルティング会社とは異なり、原則としてGPTechの社員をフルアサインはしません。フルアサインにすると、当社社員側ではどの作業をクライアントが行うべきか、どの作業をコンサルティングが行うべきかといった切り分けの思考が停止し、クライアント側においても全ての作業をコンサルティング会社の人間に任せるという考え方になってしまいがちです。

当社ではこの問題を“いてくれコンサル”と呼んでいます。依頼したいタスク・役割をきちんと考えずに、いつ何がしかの依頼したいことが出てくるか分からないから”とりあえずそこにいてくれ”というようなコンサルティング委託が非常に多いのです。この”いてくれコンサル”の状況が、発注者の主体性を損ない、自分たちにできることまで丸投げする実態を生み出しています。

最も悪い文化が、思考停止の常駐型です。GPTechでも、検討した結果、常駐型とすることもありますが、原則フルアサインしないというポリシーを掲げることによって、コンサルティング会社の人間がやるべきことと、クライアント社員ができることをきちんと考えさせることを徹底させました。

そのポリシーを長らく守ってきた結果、システムが完成したこと以外の成果として、「クライアント社員の能力が向上した」というお声をいただくことがよくあります。

また、ここ数年間は、クライアントの中で経験者の採用が進むような支援をすることを心掛けてきましたが、クライアントの企業に入社した方全員が例外なく「入社したときにGPTechがいてくれてよかった」と言ってくれました。

IT組織の体制が整っておらず、中途入社者が自身のバリューを発揮できるか不安な中で、当社が最低限の枠組みを整えており、プロジェクトを推進する際の相談相手として存在しています。

当社はハイレイヤーのアドバイザーだけでなく、手足となって動くワーカーも提供しています。相談やお願い事があれば、当社のメンバーに相談できるし、連携も取れます。「GPTechがいてくれなかったら、自分がこんなふうにうまく動けなかった」という声をいただきます。これは嬉しいコメントですね。

今後の目指す展望

― これまで事業を運営してきた感触を伺いましたが、今後、IT業界やGPTechをどのようにしていきたいか、という長期的な展望についても教えていただけますか?

(坂本)
理想的には、システム調達支援のITコンサルティング業界のマーケットを縮小させたいと考えています。なぜなら、発注者の体制がしっかりしていないためにコンサルティングが必要とされているのであり、発注者の体制がしっかりしてくればマーケットは自ずと縮小するはずだからです。

ただし、これはITのコンサルティングに限った話ではありませんが、日本の社会は雇用の流動性が低いため、プロジェクト型の業務を全て社員が担当することは不可能だと考えています。

一時的な業務や特定の知識が必要な場合には、日本社会において外部委託は避けられないと言えるでしょう。しかしそれでも、工数はあるけれども知見がないからできない、という構図は減らしていきたいと思います。

我々はこれまでハンズオンでクライアントの社員を育成してきましたが、手厚い支援を行うほどクライアントの主体性を損なってしまいます。関与を減らし、クライアント自身が自ら活躍できるようにすることを目指しています。

研修やナレッジ提供などの手段を通じて、より少ない関与でクライアントの社員の主体性を維持しながらも、IT投資の成功にはしっかりと寄与できるサービス形態にシフトしていくことで、クライアントの体制強化はもちろんのこと、コンサルティング会社に高額な報酬を支払って主体性が損なわれるという悪しき業界構造を是正していくことにも貢献をしたいと思っています。

※GPTechでは、ナレッジを提供するための手段の1つとして、「IT調達ナビ」というオウンドメディアを運営しています。「システム発注に関わるすべての人の成功を支援するメディア」というキャッチコピーのもと、役に立つナレッジを日々発信しています。
詳しくはこちら

GPTechで得られる経験

IT業界におけるプロ人材、CIOアウトソーサー日本代表とは

― 次は、人材に関する話をできればと思います。
GPTechでは、「CIOアウトソーサー日本代表」という言葉を掲げています。坂本さんの考える、IT業界におけるプロ人材、CIOアウトソーサー日本代表とは、具体的にどのような人材をイメージされているのでしょうか?

※GPTechでは、”めざす姿”として「CIOアウトソーサー、日本代表へ」という言葉を掲げています。
詳しくはこちら

(坂本)
まずプロ人材とは、様々な言い方がありますが、「再現性高く結果をコミットできる人材」のことです。

全く同じプロジェクトはありません。同じパッケージ製品を導入するプロジェクトでも、要件、導入するスコープやメンバーの力量など、クライアント企業によって異なります。プロジェクトには様々な特性や要件がありますが、普遍的な原理原則や取り組むべきことを理解し、適切なリソースを備えるための手を打つこともでき、結果をコミットできる能力がプロ人材には求められます。

プロジェクトは、一人では対応できないため、必要な知見を持つメンバーを集めて大人数で動かす必要があります。そのためにはリーダーシップや人を巻き込む調整する力、ハードな交渉力なども必要です。

リーダーシップや調整力はIT業界に限らず重要な要素ですが、プロ人材には特に求められます。

「CIOアウトソーサー日本代表」という言葉に込めた想いとしては、「オンリーワンではいけない」という想いです。

IT調達支援のサービスメニューを持っている会社は他にもありますが、GPTechのような想いを掲げた会社はないと思います。
GPTechのような想いとは、「発注者の体制を本気で強化したい」「手厚いコンサルティングのようなクライアントを甘やかすモデルではダメ」「業界の構造を変えていく」ということです。

この数年で若干状況は変わったと思いますが、まだオンリーワンだと思います。オンリーワンの会社である限りでは、この業界を変えることはできません。

よくいろんな人から「GPTechのビジネスモデルは非常によいね」と言われます。価値の高いモデルと言われますが、一方でみんなが真似しないのは、一見収益があがりにくいからです。

丸投げを受けた方が大きな売上をあげることができ、システムの開発・運用も受託した方が安定的な収益が狙えます。GPTechのように丸投げは受けず、自社開発を行わないのは収益があがりにくいモデルではあります。

誰しもが価値を認めるこのモデルで安定的な収益をあげる企業を実現できれば、第2、第3のCIOアウトソーサーが出てくると思っています。同じような考え方、サービスメニューを展開する会社が何十社と出てくることが望ましい状況であり、その上で、多くの競合が出てきたとしても「GPTechが業界の第一人者だね」と言う構図を作りたく、「CIOアウトソーサー日本代表」という言葉を掲げました。

また、GPTechが業界の第一人者という状況になったときに、GPTechの社員がGPTechの顔として活躍できる状態を作り出したいと考えています。「さすがGPTechの○○さんだね」と言われれば、それがGPTechの社員も「CIOアウトソーサー日本代表」になった、ということです。

― 前半のプロ人材について、プロ人材は原理原則を知っていることが大事だということですが、原理原則を学ぶためにはやはり多くの経験を積むことが必要でしょうか?

(坂本)
多くの経験を積むことは、有効な手段ですね。ただ、量だけでなく、多様なプロジェクトの経験を積むことが重要です。

例えば、GPTechで5年の間に様々なプロジェクトに携わった経験がある場合と、システムを100程度抱える大手企業の情報システム部長を対比して考えてみましょう。

大手企業の情報システム部長には、システム発注件数の経験量では勝てないということは分かります。システムの新規整備は多くないかもしれませんが、運用保守契約を含めれば毎年100を超える契約があり、自身が推進はしていなくても部下に推進させて承認をするなどしていますから、単純な数としては勝てません。

ただし、それが一つの企業における特定の事業モデルに関連している、特定のシステム会社に多くを発注しているという場合、経験の数は多くても幅は広くありません。

例えば、A社に大半のシステムを任せており、A社との契約や取引に慣れていても、他の企業で同じやり方が通用するか分かりません。大規模システムのシステム会社切り替えの経験は一度も積んだことがない、ということも起こりがちです。

我々は、1人の社員あたり多くても5年の間でせいぜい数十件の調達にしか関与できません。しかし、多様な業種、大手企業/中堅企業、スクラッチ/パッケージ導入、新規整備/システム会社切り替え等様々なプロジェクト類型を経験することで、プロジェクト類型が違ったとしても、「こんなことが原理原則として普遍的に共通だ」「ここは業界別に異なる」「ここはシステム特性ごとに異なる」という各論にも気づくことができます。

さらに、先ほどの情報システム部長の例で言えば、部下に聞いてもなかなか自分以上の知見・経験に基づく助言を得ることはできないですよね。GPTechであれば、自分自身よりも経験の幅が広い上司や先輩、または別の領域で経験を積んでいる同僚と一緒に仕事をすることで、幅広い知見を得ることができます。

幅広い体験から、本質考動をして、普遍的な原理原則を洗い出すことができると、より高度な知見を短期間で得ることができるのです。これが我々の会社でプロ人材を早期に目指すことのできる理由です。

※GPTechでは7つの行動指針を定義していますが、そのうちの1つが「本質考動」です。表面的な事象に捕らわれず、その奥にある本質に基づいて行動することを、日々社員が意識しています。

― 確かにGPTechの場合は、1プロジェクトにフルアサインせずに複数のプロジェクトをかけもちで担当するので、短期間で多様なプロジェクトに関わる機会がありますね。

政府CIO補佐官や非常勤CIOという働き方

― 坂本さんご自身は、政府CIO補佐官や非常勤CIOも経験されていますが、それらをしようと思ったきっかけや、そこで得られた経験なども教えていただけますか?

※「政府CIO補佐官」とは、政府組織の一員として、政府のITガバナンスにおいて助言・支援を行う重要な役割を担っており、内閣官房IT総合戦略室や各府省に配置されていました。2021年9月のデジタル庁の発足に伴い、政府CIO補佐官制度は廃止されましたが、その後も同等の役割を担う人材を雇っている府省が多くあります。
坂本は、2017年4月から政府CIO補佐官となり、現在も農林水産省の政府CIO補佐官(現:ITテクニカルアドバイザー)を務めています。

(坂本)
先ほどの情報システム部長との対比について話しましたが、政府CIO補佐官になる前はまだ語れる立場ではありませんでした。

ユーザー組織内の情報システム部長の働き方を横で見たことはありましたが、自分自身で経験したことはなく、やはり発注者であるユーザー組織の一員として働くことが重要だと感じていました。

単にコンサルティングで手伝うだけでなく、発注者の立場を経験しなければ、本当にIT体制を強化することはできない、という課題認識がありました。

とはいえ、GPTechの代表を務める中で、ユーザー企業への転職はできるはずもなく。ただ、ユーザー企業への転職はできるはずがないと思いながらも、もし転職するとしたらどのような組織が自分のキャリアをかけるに値する組織なのだろうかと妄想をしつつも、なかなかしっくりくる対象が思いつかない、という時期がありました。そんな時に、政府の職員として非常勤で働くという働き方を見つけました。

非常勤であれば転職をすることなくユーザー組織の一員になれる、また、国というのは自分の有限な人生の中で、自分のキャリアをかけるに値するふさわしい組織だと感じました。国という大きな影響力を持つ組織で非常勤としてユーザー企業の一部となるポジションをやろうと思ったのが、政府CIO補佐官をやろうと思ったきっかけです。

政府CIO補佐官になりユーザー企業の一員になるという経験は、これまでのコンサルティング業務とは異なり、目から鱗の要素が山ほどありました。たくさんのシステムを同時に管理するのは、自分の関与すべき部分や承認すべき部分などを判断する能力を培わなければ、まともに全体を適切に管理することはできません。

また、一番反省したのは、システムが完成してから起きる課題を初めて明確に認識したことです。それまでのGPTechでは、計画立案やシステム会社選定だけでなく、システムがカットオーバーし安定稼働するまで手伝うことを心がけていました。計画だけ作って終わりのようなコンサルティングにならないようにしようと考えていました。安定稼働までこぎつけることで、最後までサポートした気になってしまっていたのです。ただし、ユーザー組織の一員として関わる中で、プロジェクトのカットオーバー後の安定運用は入口でしかないと痛感しました。

その後、カットオーバー後からが本番だと考え方を切り替え、GPTechにおいても安定稼働までを支援のゴールとするのではなく、カットオーバー後においても伴走型のアドバイザーとしてシステムの活用と成果に貢献する形にサービス範囲を広げるきっかけにもなりました。

― 実際に、システムがカットオーバーしてからの課題には、どのようなものがあるのでしょうか?

(坂本)
システムトラブルやセキュリティイシューの発生、サポート期限の切れたソフトウェアやパッチを適用するための改修コストなど、運用中に予想外のコストが発生することがあります。システムを使い続ける上で対応せざるを得ない状況は、まさにシステム会社の儲けどころになっており、情報の非対称性によって高コストを払わなければいけないという構図があります。

発注者とシステム会社のパワーバランスはフェーズによって変わると思っています。

システム会社の選定段階や開発期間中は、発注者が優位な立場を利用して横暴な振舞いであることが目に余るくらいあると思っています。一方で、運用保守工程で、そのシステムがないと事業・業務がまわらないという状況になると、その瞬間からシステム会社側が優位な立場に変わり、対応するためには高額な費用が必要だと主張されてしまうと、発注者は受け入れざるを得ない構図になっています。

我々はシステム会社叩きをしないと言いましたが、それは発注者が優位な立場にあるときです。一方で、運用保守の工程では、発注者がシステム会社の提案や見積もりを適切に判断するためにサポートをする余地が大きいと思います。

最後に、カットオーバー後の問題として、ある意味一番大きい問題ですが、目指した使われ方をしていないという問題があります。

例えば、業務システムが個別で分散していいて、データがバラバラで活用できないという問題を解消するために、システム統合やデータ連携を進めようというようなプロジェクト。システム統合自体は計画通り進み、システムは完成したものの、思うようなデータ登録がされなくて結局データ活用が進まない、というのは良くある話です。システムの活用促進も取り組むべき重要なテーマだと思います。

― 民間企業の非常勤CIOについても、教えてください。

(坂本)
政府CIO補佐官になる目的として、ユーザー企業の一員として働くことを考えていましたが、公共組織という独特な形態であり、またあくまで補佐官であり責任者ではない、という限界もあります。

民間企業においても、高度な専門人材が非常勤で働くモデルが増えてくるべきだと考えていましたし、また、自分自身もCIOとしての責任あるポジションを経験することが重要だと思った、という2つが民間企業での非常勤CIOを目指そうと考えた理由です。

はじめに業界団体を立ち上げ、非常勤CIOという働き方についてのメッセージを企業・人材に対して発信しました。その後、その団体の提唱する働き方を自ら追求するために、当時関わっていたクライアントに対して非常勤CIOになることを提案し、承認されて着任しました。

※坂本が副代表理事として、一般社団法人CIOシェアリング協議会を2019年9月に設立しました。
詳しくはこちら

目から鱗の要素はあったものの、正直言って、十分なバリューを発揮できたとは思っておらず、非常勤CIOの難しさを痛感しました。

かけた時間が少なすぎたというのは一つあります。

政府CIO補佐官も非常勤で週当たりの稼働時間はかなり抑制気味ですが、政府CIO補佐官着任時には、組織理解をするために規定勤務時間以外も含めてそこそこ時間をかけました。

民間企業の非常勤CIO着任時には、規定の稼働工数以上の時間を割くことができず、経営者との対話、プロジェクトの立て直しやIT部門組織整備にフォーカスしてしまい、事業理解や現場業務理解、経営者以外との人間関係構築などに多くの時間を割くことができませんでした。それが、バリューを発揮しきれなかった要因かと。

その会社の経営者の変更があったことをきっかけに、非常勤CIOは辞めることにしました。非常勤の立場であっても、最初の段階ではもっとエネルギーをかけて関わるべきであったと感じています。

新卒でGPTechに入って得られる経験、目指せる人材

― 新卒でGPTechに入ると、どんな経験を積むことができて、どんな人材を目指すことができるのかをお伺いしたいと思います。
GPTechだからこそ、他のコンサルティング会社やシステム会社と違って、こんな経験が積めるといった特徴があれば教えていただけますか?

(坂本)
まず、先ほどの大手企業の情報システム部長の例でも話したように、事業会社でIT業務に従事する場合とは違って、GPTechでは多様な経験ができるという点が異なります。高度な知見を持つ先輩上司からの指導を受けながら、様々な経験を積むことができます。

大手コンサルティング会社との違いとしては、例えばシニアコンサルタントまでの職位は、大手ファームでは1プロジェクトにフルアサインが前提です。大規模なプロジェクトに関わる機会を持てる可能性は高い一方で、5年経ってやっと3プロジェクト経験できるか、場合によっては1プロジェクトしか経験できていませんということもあり得ます。GPTechでは、フルアサインではないので、多様な経験を積むことができます。

また、GPTechではIT調達支援だけではなく、ITガバナンス強化のコンサルティングの提供を強化しているところが特徴です。IT調達支援では、できるだけナレッジ提供型のサービスにシフトしていき、コンサルティングサービスとしては、ITガバナンスの構築・運営にシフトしていこうと考えています。

ITガバナンス支援においては、組織全体のシステムを見ていくため、自らプロジェクトを推進する経験は減るかもしれませんが、その代わりに数多くのシステムの状況を同時に把握することができます。

ITマネジメント支援としてのIT調達支援を行いながら、ITガバナンス支援も行うというのは、地力も付けながら幅広い知見を得ることができる良い働き方です。

最初は実行支援に従事することがよいと思いますが、ある程度経験を積んだあとには、ITガバナンス支援の経験を積むことで知見の幅を広げることができます。

幅広い知見を持つことで、若いうちから部長クラスでも対等にやりとりをすることができるようになり、CIOアウトソーサー日本代表の入口に立つことができます。クライアントのどの社員よりも自分の方が実力を持っていると言えなければ、プロ人材、CIOアウトソーサーとは名乗れないため、「IT調達支援での地力アップとガバナンス支援での知見の幅拡大」ということが実現できるのが、GPTechの事業モデルの特徴です。

―それでは最後に、将来的にIT業界や社会に貢献したいと考えている学生、CIOを目指したいと考えている学生に対してメッセージをいただけますか?

(坂本)
IT業界に立ち向かう上で、大きく2つの切り口があると考えています。

一つは、自身の技術力を活かして優れたITサービスを作る方向性です。もう一つは、ITを利用する側の立場で、組織や業界を変革していく関わり方です。

前者のITサービスを作る方法については、一人でも世の中に大きな影響を与えることができます、難易度は置いておいて、一人でサービスを打ち出して成功し、それが大きな会社に成長する事例はたくさん存在します。そういった形でIT業界を変革することは可能だと思っています。

我々は後者の、主にITを利用する側の立場として、「ITを利用する側が変わらないとIT業界は変わらない」という課題にチャレンジしています。

プロ人材のところで言及しましたが、どれだけ多くの人を動かせるか、変革できるかが、我々の事業モデルの鍵となります。リーダーシップを発揮して、組織やチームを動かし変革を実現したいという思いを持っている方にとって、我々の事業モデルは非常に良いと思います。

我々は、自分の周囲のチームを変えるだけでなく、業界全体を変えるという重たいテーマに取り組んでいる会社ですので、簡単にゴールにたどり着けるものではありません。

まずは自分自身の力を高めながら、目の前のクライアントを変えることからはじめていただきたいです。そして徐々に自身の視座を高めて、目の前のクライアントに留まらず、業界構造をどう変えていくかということにチャレンジしてもらいたいと思っています。

―インタビューとしては以上となります。ありがとうございました。


本記事で、IT業界を変えたいという代表の強い意思や、実際にGPTechがIT業界の大きな問題に立ち向かっていることが伝わっていると嬉しいです。

GPTechに少しでも興味をお持ちいただいた方は、ぜひ以下のフォームからお問い合わせをお待ちしております。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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