システム導入企画~開発会社選定の工程でITコンサルタントが注意すべきポイント(前編)
こんにちは。GPTech新卒2期生の吉原です。
この記事では、我々がITコンサルタントとして、新しいITシステムを導入するクライアントに対して行っている支援―どのような業務をどのような流れで進めているのか―について、私が実際に担当したプロジェクトの事例を用いながら、紹介します。
具体的には、業務システムの企画・計画作りから始まり、実際にシステム開発を担うシステム開発会社(ベンダー)を選定するまでのプロセスにおいて、ITコンサルタントがどのように関わっているかをお伝えするものです。
特に、「上流工程の仕事に興味があるけれども、ぼんやりとしか仕事内容を知らない」「システム導入の上流工程に携わったことがあるものの、独学のため体系的な進め方を知りたい」という方に、おすすめの内容です。
今回の記事の背景にあるのは、私が入社一年目にアサインされたプロジェクトです。受託でデータ集計を行っているクライアントがデータ集計業務に利用しているシステムを刷新するというもので、スクラッチ開発とパッケージ導入双方の可能性を検討しながら、ITシステムの企画~システム開発会社選定を実施するプロジェクト(以下「データ集計システム刷新プロジェクト」とする)でした。
その経験と、プロジェクトリーダーを務めた先輩社員の寺門へのヒアリングを基に、GPTechのITコンサルティングサービスにおける業務内容とポイントを紹介します。
システム開発会社を選定するまでの大枠の流れ
GPTechでは、システム導入における企画・業者選定フェーズ(=システムを発注する企業が主体的に実施する必要があるフェーズ)を、大きく以下の5つの工程に分けて考えています。
- A工程:現状分析
- B工程:技術調査
- C工程:システム刷新計画立案
- D工程:要求仕様検討
- E工程:業者選定(システム開発会社の選定)
データ集計システム刷新プロジェクトは、キックオフから運用までの一連を支援するプロジェクトだったため、私がアサインされた半年間にわたるA~E工程に加え、F工程(PMO運営支援)、H工程(移行・教育支援)も実施しました。
※プロジェクト全体(A~H工程)の期間は約2年でした。
今回は、企画・業者選定フェーズを中心に取り上げ、本記事(前編)でA~B工程、次の後編記事でC~E工程について、具体的な成果物や作業内容に触れつつ、説明します。
A工程:現状分析
A工程は、次期システムのあるべき姿を描くためにまずは現状の調査をする工程で、目的は以下の2点です。
- 現状の業務やシステムの利用方法を明確にすること。
- 現状の業務・システムの問題点・課題点を洗い出し、整理すること。
A工程の具体的な作業は以下の通りです。
- プロジェクトの進め方策定
- キックオフ
- 現状業務ヒアリング
- 現行システム調査
- AsIs業務フロー作成
A工程で実施する作業
1. プロジェクトの進め方策定
プロジェクトのキックオフに先立ち、プロジェクトの進め方や運営方法について、まずはGPTech側で案を作成します。具体的に検討する内容の例を以下に示します。
- プロジェクトの目的、スコープ
- プロジェクトの全体スケジュール
- プロジェクトの体制
- 成果物
- 会議体のルール(会議体の種類、頻度、参加者等)
※会議体の種類について、データ集計システム刷新プロジェクトでは、定例会(クライアント側プロジェクトメンバーと週次で開催)、ステアリングコミッティ(定例会メンバーに経営層を加え月次で開催)、個別会議(ヒアリング等)を行いました。
2. キックオフ
クライアント(プロジェクト関係者)との顔合わせ・挨拶を行います。「1.プロジェクトの進め方策定」で検討した内容を経営層や現場のプロジェクトメンバーに説明し、合意を得ます。
3. 現状業務ヒアリング
今回のデータ集計システム刷新プロジェクトに関係する業務部門担当者にヒアリングを行い、現状の業務の流れを把握します。その際、業務観点での業務やシステムにおける課題・要望について、現場の業務部門担当者だけでなく、経営層や情報システム部門担当者クライアントからもヒアリングし、洗い出しを行います。
今回のデータ集計システム刷新プロジェクトでは、各部署に対し1~2時間のヒアリングを複数回実施しました。
4. 現行システム調査
現行システムのマニュアルを確認したり、現行システムを実際に操作したり、現行システムの開発業者へのヒアリングなどにより、現行システムの仕様を把握し、システム観点からのクライアントが抱える課題をつかみます。
5. AsIs業務フロー作成
現状業務ヒアリングで聞き出したAsIs業務の流れを、「AsIs業務フロー」と呼んでいる図に落とし込みます。
※業務フローの詳細については、以下の記事をご覧ください。
A工程のポイント
A工程で注意した方が良いと感じた点は、現状業務ヒアリングに先立ち、「業務知識・専門用語をできる限り早い段階でキャッチアップする」ことです。
今回のデータ集計システム刷新プロジェクトの中で、何度かヒアリングが予定通り進まないことがありました。原因としては、ヒアリングの中で頻出する業界・クライアント業務に関わる専門用語について、その用語の意味の把握・理解に時間がかかってしまったというものです。
この事態を防ぐには、ヒアリング前に可能な限り業務知識をキャッチアップすることが必要です。
キャッチアップにあたっては、クライアントの公式Webサイトや内部資料(業務マニュアルや用語集等から、可能な限り事前に情報収集する必要があります。
必ずしもそれらに求めている情報がピンポイントで載っているとは限りませんが、ヒアリング前にどれだけ多くのクライアント業務に関する情報を把握、理解しているかが、ヒアリングの結果を左右します。
発注側に立ってプロジェクトを支援するGPTechにとって、クライアントの業務理解はA工程に限らずプロジェクト全体を上手く成功に導くことができるかどうかの鍵となります。
B工程:技術調査
B工程は、次期システムに必要となる技術を調査する工程で、目的は2点あります。
- 次期システムの妥当な実現方式を絞り込むこと。
- 有力なシステム開発会社候補のあたりをつけること。
B工程の主な作業は以下の通りです。
- システム開発会社に求める条件をざっくり固める
- Web上で、条件にあうシステム開発会社を探し、問合せする
- システム開発会社候補との打ち合わせを行う
B工程で実施する作業
1. システム開発会社に求める条件をざっくり固める
システム開発会社の調査の前に、現状調査で分かったシステムの制約や業界・業務の特徴から、システム開発会社に求める条件(E工程の業者選定における評価の軸)を固めます。
今回のデータ集計システム刷新プロジェクトでは、特に、「システムのUI(属人化せず、簡単に操作できること)」と、「処理速度(大量なデータを可能な限り短時間で集計できること)」を重視して調査を行いました。
2. Web上で、条件に合う開発会社候補を探し、問合せを行う
Web上で、様々な開発会社を調査し、打合せを実施する候補を選定します。
今回のプロジェクトでは、刷新対象システムでデータ集計を行うことから、データ集計システムの構築に強みのある開発会社を中心に調査を実施しました。
開発会社候補を選定する際のポイントについては、以下の記事を参考にしていただければと思います。(データ集計システム刷新プロジェクトでは、パッケージとスクラッチ開発双方について開発会社の調査を行いました。)
3. 開発会社候補との打ち合わせ
問合せを行い条件に合うことが分かったシステム開発会社候補とは実際に打合せを行い、クライアントの刷新対象のシステムの説明や、システム開発会社から見て次期システムでは現状の課題をどのように解決できると考えるか、等の意見交換を行います。
今回のデータ集計システム刷新プロジェクトでは、B工程で7~8社のシステム開発会社と打合せを行いました。この段階ではまだシステムの詳細についての打合せは実施していません。様々な観点を考慮して見込みの強さを整理することが目的であるため、基本的に当社との間で打合せを実施しました。
特に有力な候補については、次のC工程で発行するRFIへの対応に向けて、より密なコミュニケーションをとっていきます。
B工程のポイント
技術調査というと、開発会社候補から一方的に意見を伺うものと思われるかもしれませんが、実際はそうではありません。
クライアントがシステム開発会社を選定するのと同様に、もちろんシステム開発会社としてもプロジェクトの実現度や難易度を見極めて手を挙げるかどうかを選んでいただく必要があります。
そのため我々には開発会社候補との打合せの中で、「開発会社に興味を持ってもらい、より良い提案をしてただくために必要な情報を提供すること」が求められます。
開発会社が興味のある情報としては、以下のようなものがあります。
- 技術要素…自社の技術を活かせるプロジェクトであるか
- 費用…システム開発の予算感(プロジェクトの規模感)はどのくらいか
- 期間…全体スケジュール感はどのようなものか
- 競合…他の開発会社候補は何社いるか
- プロジェクトの意義…費用面以外で、プロジェクトを引き受ける意義や価値があるか(案件実績の拡充や人材余剰の解消、自社にとって注力したい領域か否か等)
上記の中には、公平性・機密性の観点からこの段階での提供が難しいものもありますが、提供が可能な情報については、システム開発会社候補が提案の可否を判断しやすいように詳細を伝えることが大切です。
逆にプロジェクトのイメージをつかんでいただけないと、システム開発会社候補が提案可否(=相応のリソースを割いてでも積極的に案件をとりにいくかどうか)の判断をできないまま時間が過ぎていき、結局、受注可能性が低いとみなされて辞退されてしまうリスクがあります。
最後までお読みいただきありがとうございました。「後編」は2022年6月以降に公開予定です。
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